肥料について教えてください
植物の栽培に肥料が必要なのは知っていても、きれいな花を咲かせたい! 立派なダイコンを作りたい! など、目的によって必要になる養分は違いますが、なんとなく与えていませんか?
植物に必要な養分で特に重要な肥料の三要素N,P,Kを中心に、植物の成長や目的に合わせて肥料を選んで与えなければ、効果を得られません。
この記事では、肥料の種類や働きについて紹介します。
肥料について理解を深めて、栽培をステップアップしましょう。
肥料の三要素NPKとその働き
植物の成長には、光・水・空気・温度・養分が必要です。
その中の養分は土から根が吸収しますが、土中の不足分は肥料で与えます。
植物が必要とする養分には、16の元素がありますが、その中でもN(チッソ)、P(リン酸)、K(カリウム)が特に重要で、これを肥料の三要素と呼びます。
またそれぞれが葉、実・花、根の成長に働きかけ、Nチッソ=葉肥、Pリン酸=実肥、Kカリウム=根肥 とも呼ばれます。
要素 | 呼び方 | 効くところ | 不足すると… |
N | チッソ | 葉、茎 | ・葉や茎の生長不良 ・葉の色が薄くなる ・落葉する |
P | リン酸 | 花、実 | ・花付き、実付きが悪くなる ・花や実の色が薄くなる |
K | カリ* | 根 | ・根の伸長が鈍る ・倒れやすくなる ・養分や水分を葉や実に送れず、 全体の生長が阻害される |
肥料を購入すると、袋やビンに3つの数字が書いてあります。これは、三要素NPKの順番で含有量を%で表示しています。
NPK以外の要素 カルシウムとマグネシウム
N,P,Kに次いで、植物が必要とする養分には、Ca(カルシウム)とMg(マグネシウム)があります。
要素 | 呼び方 | 主な役割 | 不足すると… |
Ca | カルシウム (石灰) | 葉や実の組織を作る 根の生長を促進 | 生長不良 ・トマトの尻腐れ ・白菜の芯腐れ など |
Mg | マグネシウム (苦土) | 葉の葉緑素の構成成分 | ・光合成ができない ・葉の色が薄くなったり、 シマシマになる |
よく使われる石灰肥料の苦土石灰は、マグネシウム(苦土)とカルシウム(石灰)です。
苦土石灰は肥料としての養分補給だけでなく、土壌の酸度の調整にも使われます。
土壌の酸度について以下の記事で詳しく紹介しています。
肥料の種類
単肥 複合肥料 化成肥料
肥料の構成で分けられます。
- 単肥(たんぴ) 三要素N、P、Kのそれぞれ1種類の肥料からなるもの。(最近はNPK以外でも1種類の肥料の総称として使うこともある。)
- 複合肥料(ふくごうひりょう) 三要素N、P、Kの2種類以上を含む肥料の総称で、主に以下がある。
- 化成肥料 三要素N、P、Kの2種類以上を合計15%以上含むように化学的に合成された肥料。特に合計30%以上を高度化成、他を普通化成とに分ける。普通化成8-8-8が多く流通している。一般的に速効性がある。
- 配合肥料 三要素N、P、Kの2種類以上の有機肥料を中心に混ぜ合わせたものをさす。有機肥料が中心で効き目が遅いため、速効性の無機肥料も配合しているものが多い。
有機肥料 無機肥料
原料によって分けられます。
- 有機肥料(ゆうきひりょう) 植物や動物を原料とした有機物の肥料。油粕、ぬか、牛糞、骨粉などがある。植物が養分を吸収できるのは、土中で分解されてからのため、効きめは遅いが長く効く。
- 無機肥料(むきひりょう) 天然鉱物由来の肥料で、天然鉱物が原料のものと、化学的に鉱物を合成したもの(化学肥料)がある。効きめは、速効性から緩効性まで、多種多様にある。
元肥 追肥 お礼肥 寒肥 置き肥
肥料を与えるタイミングと目的によって分けられます。
- 元肥(もとひ、もとごえ) 植物の植え付け前に土壌に混ぜ込む肥料のこと。成長のために長く緩やかに効くものを選ぶ。
- 追肥(ついひ) 植物の成長過程でより成長を促し、肥料不足にならないように施す肥料のこと。効き目の早い速効性のものや、栽培期間が長い場合は長く効くものを選ぶ。また、成長させる目的(葉?花・実?根?)によってNPKの量を調整する。
- お礼肥(おれいごえ) 花が咲いた後や、実が成り収穫した後などに、植物の体力回復のために与える肥料。速効性の化成肥料がよく使われる。
- 寒肥(かんぴ、かんごえ) 樹木など、冬の休眠期に与える肥料。春を迎え芽や葉を出す活動を始める時に効く。
- 置き肥(おきひ) 鉢植えで鉢に置く固形の肥料のこと。化学肥料が多いが有機肥料もある。水やりの時に水で溶け出して効く。形が残っていても約1か月ごとに取り換えるとよく効く。
速攻性 遅効性 緩効性
肥料の効くスピードで分けられます。
- 速攻性(そっこうせい) 液肥を中心に水溶性ですぐに根が吸収し早く効くもの。持続性はない。
- 遅効性(ちこうせい) 施肥後しばらくしてから徐々に効き始めて長く効く肥料。有機物が中心。
- 緩効性(かんこうせい) 施肥してすぐから、ゆるやかに長く効く肥料。化学肥料が多く、コーティングされていて、溶け出す速度がコントロールされている。
液体肥料(液肥) 固形肥料
肥料の形状・形態で分けられます。
- 液体肥料 液体の肥料で水で薄めて使うものが多い。根が吸収しやすく速効性があるが、流れ出すため持続性はない。
- 固形肥料 固形状の肥料で、粉末、顆粒、ペレットや、粒の大きさが大、中、小、細などがある。土中で分解されて水に溶けだし、吸収される。一般的に大きいサイズほど、溶けだしにくく、効き目が長い。
活力剤とは、含まれる三要素NPKが肥料の規定を満たさず低いので、肥料ではありません。ただし三要素以外にアミノ酸、ビタミンなど、植物の栄養が盛り込まれているものが多くあります。
肥料の使い方
肥料の使い方は、栽培する植物によって異なりますが、基本的な事項を以下にまとめます。
1.与え方の基本 肥料が根や茎に直接触れると肥料やけと呼ばれる障害が起こります。元肥ならば2週間ほど前には土に混ぜてなじませ、追肥以降は、根に触れないよう根の周りの土に混ぜ込むようにします。
2.時期の基本 ①栽培前(元肥)②成長過程(追肥)③花が終わったり果実類を収穫した後(お礼肥)④樹木は冬季の休眠中(寒肥)
3.肥料の成分 特に追肥では、葉、花・実、根 のどこの成長を目的とするかによって、複合肥料のNPKの値に注目したり、単肥を選ぶのもよい。元肥や追肥でも全般的に効かせたい場合は、成分が均一の複合肥料を与えればよい。
4.肥料の形態 鉢やプランターには速効性なら液肥を、緩効性なら置き肥を、広い庭や畑には固形肥料を混ぜ込む。
5.用量を守る 栽培するものによって異なるが、液肥は製品のラベルを参考に薄めたものを使う。固形肥料は、1株あたりや作付面積あたりの用量を守ること。
6.その他
・元肥によく使われる苦土石灰は、石灰(カルシウム)だけでなく苦土(マグネシウム)を含むので便利ですが、使いすぎると土壌の酸度がアルカリ性に偏るので注意が必要です。
・化成肥料8-8-8は、よく流通していて、速効性があり、成分が均一で、どんな植物にも効果がある頼れる存在です。
・無機肥料ばかりを使い続けると土が単粒構造になり痩せるため、有機肥料や堆肥を有効的に使うとよい。(次項「肥料の使い方で土は変わる 団粒構造 単粒構造」で紹介)
・種まきや挿し木の土に肥料は不要です。肥料は根から吸収するので、根がないものは吸収できません。
肥料の使い方で土は変わる 団粒構造 単粒構造
肥料の使い方で土は変わります。植物栽培に適した土は団粒構造を成し、有機物を含む土です。
団粒構造とは、土の粒子が集まった団粒に富んだ構造のこと。団粒構造の土壌は、有機物を含む土中で微生物やミミズなどの働きによって土がくっついた団粒ができ、これが大小の団子状になっています。土は柔らかく、通気性、保水性、排水性に優れていて、植物の栽培に適しています。
一方、単粒構造とは、土の粒子が集まっておらず、さらさらで、硬く締まります。保水性、排水性、通気性が悪く、植物が育ちにくくなります。
無機肥料は、効果や時期や量をコントロールしやすいですが、有機肥料は、団粒構造の土を作る重要な役割を持ちます。
無機肥料と有機肥料のそれぞれの役割や長所をいかして使いましょう。
堆肥を使う
団粒構造の土壌にするには、堆肥を使うのも有効です。
堆肥(たいひ)とは、 落ち葉、もみ殻、ぬか、牛フン、鶏フンなどの有機物を微生物の働きによって分解したもので、植物を育ちやすい土にするための土壌改良剤の位置づけです。
土に混ぜ込んで使ったり、土の上にマルチング(カバー)して使います。
肥料ではありませんが、肥料成分が含まれるので、使い過ぎには注意が必要です。
肥料の参考書 おすすめの3冊
肥料や土について詳しく書かれた本を3冊紹介します。どれも入門編でわかりやすく、ぜひ参考にしてください。
まとめ
ここでは、植物の成長に欠かせない養分を、植物に与えるための肥料の紹介をしました。
肥料の三要素NPKや、カルシウム、マグネシウムの役割、肥料の種類や、肥料の与え方による土の変化や土の構造についても説明しました。
肥料は、その種類や効能、使い方などまだまだたくさんありますが、今回の記事が参考になればうれしく思います。
肥料を効果的に使った植物の栽培をはじめてみませんか。
この記事で紹介した土と肥料の本は以下の3冊です。
肥料に関連のある土壌の酸度について、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考に見てください。
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